2012.09.14 ヤシカス:本流に入りつつある基剤

ヤシカスはヤシの実の殻をすり潰して製造されるもので、国外では広く使われている栽培基剤であるが、国内ではこれまでその認知度・使用量ともに低かった。しかし近年の泥炭土の価格急騰により、価格が安定しているヤシカスは泥炭土の独占的な局面を打破し、ますます多くの花卉栽培者の支持を集めている。

価格の低さ、通気性の良さが流れを加速

現在、50キログラム、300リットル規格の輸入泥炭の価格は160元を超えている。泥炭土の再生性のなさから、ほとんどの業界人はさらなる価格の上昇を予想している。これに対し、同規格のヤシカスは泥炭より30%安く、価格も非常に安定している。生産コストの削減を余儀なくされている花卉生産企業にとって大きな魅力になっている。

アモイ江平生物基剤技術有限公司はヤシカスを生産する国内最大の企業のひとつである。社長の夏江平によると、近年のヤシカス販売量の増加は目に見えて加速しており、特に低価格商品に関しては、花卉企業の中で普及する勢いであるという。ヤシカスの低価格商品は国産の泥炭土に比べて価格が同等かまたはさらに安く、生産者が両者を一定の比率で混ぜ合わせて栽培基剤とすることで、国産泥炭だけの場合と比べてより高い通気性を確保できる。このような手法は広東省の多くの草花栽培者の中で普遍的に用いられている。「泥炭土だけの方が栄養は多いが、ヤシカスと混ぜ合わせることで効果が高まる」広東省仏山市高明区の松柏花木場の責任者は、数年間の試行錯誤を経てついに草花生産に適したヤシカスの混合比率を発見したという。

ヤシカスが普及しつつあるのは南部だけでなく、北部でも多くの企業から期待を集めている。北京旭世欣華農業科技有限公司の社長である何連球は長年にわたってヤシカスを使用してきた。以前、ヤシカスの価格は泥炭土と比べて15%程度しか安くはなかった。しかし近年の泥炭土価格の大幅な上昇により、ヤシカスの使用者が急増した。また、ヤシカスの吸水性・通気性がともに高いうえ、環境に優しく、輸送が容易であることから、将来必ず人気のある基剤になる、と彼は語った。北京大漢農業科技有限公司の業務代表である李国輝によると、ここ数年の大漢社の販売内容を見ると、以前は大型盆栽用のヤシカスが多かったのが、今では多くの中小型盆栽を扱う顧客もヤシカスを試し始めているという。花卉業界での応用が日に日に拡大していることから、もともとは野菜用ヤシカスを生産していた企業も花卉業界に転換してきている。広州市宝康園芸有限公司の販売する輸入ヤシカスは2010年に中国に導入されて以降、主として野菜種苗向けに基剤を提供してきたが、最近では花卉植物の栽培向けの圧縮ヤシカスも製造販売している。このようなヤシカスは3回篩いにかけて不要なヤシカスを除去した後、pH 5.5-6.8、EC 0.3-0.8に調整し、植物が必要とする様々な微生物や菌を含ませた結果、植物根の発育や抗ウイルス性に高い効果を発揮している。

産業に規範化を、普及に努力を

ヤシカスは泥炭の代わりとなるにはまだしばらく時間がかかるだろう。現在、ヤシカス製造企業に原材料を提供できる産地があまりにも少なく、海南島などごく一部の地域でのみヤシの木を集中的に栽培しており、アモイ江平などの企業は毎年、ヤシの実を量産するインドネシアやインド、フィリピンといった国から100コンテナ以上の原材料を購入しなければならない。そのうえ、国内でヤシカスの販売を行っている企業の大半は貿易会社であり、花卉業界に関する知識が少なく、単に営利目的で商品を販売するのみで、ヤシカスと花卉の相性に関心がなく、花卉企業と共同で商品の研究開発を行うなどは論外である。何連球によると、ヤシカスの利用にもリスクはあり、自分の会社では基剤の中でヤシカスの占める割合は20%程度だが、別の花卉企業では50%に達する所もあるという。栽培基剤にどの程度のヤシカスを混ぜ込むかについては、同一品種の花卉でも共通の基準はなく、すべて企業自身が経験に基づいて模索しなければならない。さらに、商品のブランドが変われば品質も変わるうえ、ヤシの実の殻には大量の塩分が含まれているため、異なる処理方法によってヤシカスに残留するナトリウムイオンの濃度が大きく変わるが、このナトリウムイオンは他の栄養素と拮抗して作用する。何氏は、企業がヤシカスを使用する際は、顆粒の細かさやナトリウムイオン濃度が生産する花卉に与える影響を調べるようアドバイスした。

一方で、ヤシカスの生産・販売に従事する業界内企業は徐々にこの点を意識し始めており、花卉企業と共同で研究開発を行い、花卉に最適なヤシカスの使用比率を発見している。江平公司の開発した、ラン専用のヤシカスは国内で特許を取得した。国内の花卉栽培企業の中でヤシカスの使用を推進するにはまだまだ模索が必要である、と夏江平は考えている。国外ではヤシカスだけの栽培基剤を用いた花卉生産は普遍的にみられる現象である。なぜなら外国の花卉生産は点滴灌漑が主流であり、水と肥料が適切に与えられている環境ではヤシカスの通気性の良さが強調され、花卉の根は腐らない。しかし、国内ではまだスプリンクラー灌漑が主流であるため、水分や肥料の保持力に長けている泥炭の方がより適している。ヤシカスを大量に使用すると、花卉の初期成長が弱々しいものになってしまう。これをうけて、江平公司は現在、国外からの泥炭輸入業務を代理するとともに、泥炭とヤシカスの高価格の混合基剤の研究開発を行っており、ヤシカスと輸入泥炭をコーヒーとミルクのような、相互促進的な関係にすることを目指している。